2013年3月18日月曜日

Devil Doll, インタビュー要約(3)

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(承前)

さらに、アーサー・ブリス(1891-1975)、ウィリアム・オルウィン(1905-1975)、アーノルド・バックス(1883-1953)、ベンジャミン・フランケル(1906-1973)、ハンフリー・サール(1915-1982)といった、20世紀イギリスの作曲家たちは、Mr. Doctorを、サウンドトラックの世界の深みへと導いていった。とりわけ『邪魔者は殺せ』(オルウィン)(1、『来るべき世界』(ブリス)(2、といった映画のスコアは不滅の傑作であると言える。また彼は、バーナード・ハーマン(3を除き、アメリカの映画作曲家にはそれほど高い評価をしていないようである。ヨーロッパの作曲家のなかでは、エンリコ・モリコーネ、とりわけ彼のWho saw her die?/ Chi l'ha vista morire?(4というやや無名の作品を高く評価している。また、ニーノ・ロータでは、『フェリーニのカサノヴァ』を高く評価し、そのなかでもIl Duca Di Wurtenbergという曲を、もっともDevil Doll的な曲であるとしている(5
 またロックについて言えば、それはロックの持つ有効性(effectiveness)がもっとも大きな影響を与えたと、Mr. Doctorは語っている。それはあたかも形成外科手術のメスのように、直接核心に辿り付く。彼は傾倒しているロックとして、Teddy and His Patchesによる60年代のシングル、Suzy Creamcheeseを挙げている(6。またArthur Leeが、彼のバンドLoveの第三作Forever Changesのために書いた曲や(7、いくつかのプログレの名盤、キング・クリムゾン『レッド』(8、ピーター・ハミルのアルバムChameleon In The Shadow Of The Night収録の'(In The) Black Room/The Tower'(9、そして日本のJ. A. シーザー『身毒丸』(10を挙げている。

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(1)『邪魔者は殺せ(Odd Man Out)』:1947年のイギリス映画。監督はキャロル・リード。

(2)『来るべき世界(Things to Come)』:1936年のイギリスSF映画。原作はH. G. ウェルズ自身。監督はウィリアム・キャメロン・メンジーズ。

(3)バーナード・ハーマン(1911-1975):アメリカの映画作曲家。ヒッチコック映画への参加、『市民ケーン』などの映画の作曲で知られる。『タクシードライバー』が遺作となった。

(4)Who saw her die?/ Chi l'ha vista morire?:1972年のイタリア映画。ジャッロ(ショッキングな演出を多用した犯罪もの)映画。Mr. Doctorはこの音楽が「背筋を凍らせるような子供のコーラス」に基づいていると説明している。

(5)『フェリーニのカサノヴァ』:1976年のイタリア・アメリカ合作映画。稀代の女性遍歴家カサノヴァの生涯を描いている。

(6)Teddy and His Patches:Teddy Flores Jr.によって1964年(一旦解散、1966年再結成)、サン・ホセで結成された。Patcheというのは、Floresが癌で失った片目に眼帯をかけていたからである。Suzy Creamcheeseは1967年発売の彼らのシングル。Suzy Creamcheeseという名前は、Frank Zappa & Mothers of Invasion, Freak Out!収録の'The Return of the Son of Monster Magnet'冒頭の語りから取られている。


(7)Love:アフリカ系アメリカ人Arthur Lee(1945-2006)が中心となって結成されたフォーク、サイケデリック・バンド。Forever Changes(1967)は彼らの最高傑作としても名高い。

(8)キング・クリムゾン:言わずと知れたプログレッシブ・ロックの元祖にして王者。バンドというよりもむしろ、ロバート・フリップのソロ・プロジェクト化している。アルバム『レッド(Red)』(1974)は彼らの最高傑作とも言われ、またこのアルバムでキング・クリムゾンは終わったと考えているファンも多い(実質上のラスト・アルバム)。へヴィ・メタルの元祖とも言われる。


(9)ピーター・ハミル(1948-):プログレバンド、ヴァン・ダー・グラフ・ジェネレーターの創始者。Chameleon In The Shadow Of The Night(1973)はソロになってからのアルバムである。


(10)J. A. シーザー(1948-):劇音楽の作曲家として有名。寺山修司主催の『天井桟敷』に参加し、数々の音楽を手掛ける。寺山修司の映画作品の音楽も担当している。『身毒丸』は日本プログレ史、日本アングラ音楽史に残る名盤。

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